小泉八雲 文学散歩「日本の面影」(1)
小泉八雲と言えば「怪談」の著者としてよく知られています。しかし「どんな人だった?」「他にどんな本を書いた?」と問われると、詳しくは知らない人が多いようです。彼は全ての作品を英語で発表し、西洋の読者のために書きました。そのため日本の読者は、八雲文学を翻訳本でしか読んでいないと思われます。本講座では八雲の著書を原文(英語)で斜め読みしながら、八雲文学のエッセンスを楽しんでいきます。そしてその珠玉の言葉から、小泉八雲の人物像をあぶりだしていきます。
八雲が来日して最初に出版した本はGLIMPSES OF UNFAMILIAR JAPAN。下の写真はその初版本(1894年)で、上下二巻699ページに及ぶ大作です。八雲はこれを「竹の本」と呼んで、美しい装丁をとても気に入っていたそうです。 「知られざる日本の面影」「日本瞥見記」という翻訳で知られていますが、本講座ではこの初版本をめくりながら、八雲文学珠玉の一品を紐解いていきます。
秋講座で主に扱うのは、THE CHIEF CITY OF THE PROVINCE OF THE GODS です。日本語では「神々の国の首都」と訳されることが多いのですが、この章で描かれているのは島根県松江市の風景。次の一文から始まり、松江の町に響く音の世界へと読者は誘われていきます。
●THE first of the noises of a Matsue day comes to the sleeper like the throbbing of a slow、 enormous pulse exactly under his ear.(中略)
松江の一日の始まりに聞こえて来るのは、枕元で耳に響くゆっくりと大きく脈を打つような音である。
●Then the boom of the great bell of Tōkōji、 the Zenshū temple、 shakes over the town.(中略)
次に禅宗の寺院である洞光寺の大きな鐘の音が、街中に響き渡る。
●And now from the river-front touching my garden there rises to me a sound of clapping of hands—one、 two、 three、 four claps(中略)
そして今、我が家の庭に面した川岸から、柏手を打つ音がパン、パン、パン、パンと4回聞こえてくる。
本作品に登場する松江の町を取材した映像「文学散歩」をご覧いただきながら、視覚的にも楽しむ講座です。右のQRコードから映像の一部をご覧ください。
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