『雑兵物語』を読む ―戦国時代の足軽たちの回想―
『雑兵物語』は、戦国時代最後の生き残りの雑兵たちによって、当時の関東方言で語られた回想を書き記した聞き書き集です。
『雑兵物語』の存在が文献上で最初に確認されるのは天和3年(1683年)ですが、『雑兵物語』の本文中に明暦の大火(1657年・明暦3年)の言及があり、また、島原の乱(寛永14年・1637年)の従軍経験者たちが老人に成り果てたという記述もありますので、明暦3年〜天和3年(1657年〜1683年)の間に成立したと考えられています。
戦国時代は、NHKの大河ドラマや、映画・テレビドラマ・小説・マンガなどの題材として繰り返し採りあげられている人気の時代ですが、それらに描かれる戦国武将も、戦(いくさ)も美化され過ぎており、また、歴史的事実からかけ離れることもあって、一種のファンタジー作品のようになっています。しかし、日本社会の内乱時代の実態はそのような生やさしいものではなく、殊に現実の戦争においては凄惨な場面が繰り広げられていることは、洋の東西や時代の新古を問いません。『雑兵物語』は、過酷な戦場を実体験した人たちによる生の証言記録として貴重な資料です。
『雑兵物語』の冒頭は、鉄砲足軽小頭(鉄砲足軽部隊の小隊長)の朝日出右衛門さんの回想から始まります。
原文:杖を突っ張る役だからは、推参をも顧みず、申すことを聞きめされよ。言ふまでは御座ないが、首に引っ懸けた数珠玉の結び目を襟の真ん中へ当たる様に繰り越しめされい。胸の通りに(数珠)玉があれば、鉄砲が溜められないもんだ。
現代語訳:おれは杖を突っ張る役目だから、差し出がましいことをも顧みないで、申すことをお聞きなされよ。言うまでもないことですが、首からひっ懸ける大数珠玉の結び目が襟元の真ん中に当たるように順繰りにしなされ。胸のあたりに大数珠玉があれば、鉄炮の狙いがつけられないものだ。
本講座は、『雑兵物語』の原文にある独特の面白さを味わいながら、解説をまじえて全文を現代語訳していく講座です。
- 開催日
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- 場所
- 千代田区
- 主催者
- 東京都立大学
- 定員数
- 15名
- 費用
- 10100円
- 申込期日
- 問い合わせ
- 03-3288-1050平日9:00~17:30
- 対象世代
- 現役世代
- 学習レベル
- 初級者
- 関連する資格、職業等
備考
テキストとして原本の影印のコピーと翻刻プリントを配布します。


