2025年9月6日(土)〜2025年9月27日(土)
現代フランス文学入門 ミシェル・ウエルベック『闘争領域の拡大』を読む
歴史・哲学
対面講座

今日の日本において、「弱者男性」という言葉が目につくようになりました。この造語は「性的に、経済的に」不遇な男性を指すようです。1994年に発表されたミシェル・ウエルベックの第一小説『闘争領域の拡大』は、まさにこの問題に焦点を当てている様に思われます。主人公の同僚であるティスランは、容姿に恵まれず、金持ちでもなく、しかし愛されることを渇望している人物として活写されているからです。ウエルベックの小説を語る際の常套句に「社会批評的」という言葉が挙げられますが、本小説はたしかにその側面が強く、今日の日本の現状を鑑みる上で重要な視点を与えてくれるでしょう。本講座では、さらに同小説の野心を探究することを目的とします。
社会批評という側面については、デビュー作に至るまでの雑誌記事や、ウエルベックが傾倒していたぺレックの小説を参照しながら、当時のフランス社会と「弱者男性」のありようを確認します。この確認からは、逆説的に、作品の「社会批評的ではない」側面へと目を向けることが可能になります。そもそも、「弱者」なのは小説の語り手ではなく、彼の同僚なのです。こうした作品内のギャップに目を向けるだけで、彼の小説を独善的な社会批判とみなす批評が、行き過ぎた単純化であることがわかるでしょう。テクストは日本語訳の文庫版を使用します。授業では、この日本語訳にもとづいて、講師がレジュメ資料を準備します。各自で購入して持参してもかまいません。
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備考
【使用書籍】
『闘争領域の拡大』(河出文庫)
【参考書籍】
『ウエルベック発言集』(白水社)
『闘争領域の拡大』(河出文庫)
【参考書籍】
『ウエルベック発言集』(白水社)